きれいなきれい3

田添公基と明美のブログ。

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

窓      田添明美

霧が晴れる ふりむくと足あとの影がわずかな光に映っている まだ少し水をふくむ霧のなごりに ときおりしぶきをあげ さらさら水が流れるように 無数の窓が展かれていく R2.9.23

ひみつ      田添明美

ひとっこひとりいない夜 けっぺき家の夜の子はだれにも踏まれていない道を歩こうとし そんな道はないと考えたちつくした それを見ていた夜は子供をさらい道の上空においただれの足あともない道である 子供はふいに笑い ちいさな夜を放ちはじめると 笛のよう…

炎       田添明美

参道に赤い炎と青い炎が向きあってもえている がらんとしたこの夜更けに 誰がお参りをしているのだろう 月にてらされた影はひそひそと願いごとをつぶやいている 抱いた影の子らにあたらしい着物をかぶせ わたくしたちが消えず在るようにわたくしたちの子らも…

9月半ば       田添明美

徐々に虫の音がよわまってきている 夜になると電車の音がひゞきわたる ガタンゴトンコトン 夜は電車の音が中心で虫の音は伴奏におもえるが しずかにけんめいにないている R2.9.17

なわとび     田添明美

なわがゆれているなわを持つ二人の子がお入りなさいお入りなさいといっている なわが飛べない子がいる 風が飛びこんでいってすっと飛んでみせる 何度も何度も なわの中で飛んでみせる 次はあなたの番よ次はきっとね じっと見ていたその子の頬が赤らんでふっ…

シーソー        田添明美

目覚めた千匹の小鳥が止まるとシーソーが上がる 上がった片側で子鬼たちがはねると千匹の小鳥はさゞめいて上がる くっくくっく くりかえしそこだけぽっかり笑い声がする 夜のしゞまのなかで 朝が訪うまで R2.9.17

一日      田添明美

ひたひたと夜は走った ある窓辺に佇ち受け継がれた子守歌のように(おやすみ)をいい またべつの窓辺に佇ち(おやすみ)をくりかえし 仕事にいそしみ朝まで夜は眠らない 交代の時間がくる 「さあ 今度は自分の番だ」 朝のやわらかなふとんに包まれ夜は眠りだ…

無人      田添明美

夏に最後の住人が出ていった 築80年以上の木造アパートは無人となった 道路からアパートまで幅2メートル弱の小道が続くが夏草の勢いに負け小道はふさがれてしまった ずっと前から朽ちかけていたのだ もうここに家は建たない小道が細すぎるからだ がらんと、…

水浴        田添明美

馬をひろったあきかんをひろってブローチをひろって川がながれてきたので川もひろった ほしいものがほしいというのは癖になりそうでいい すこしよけい空が 空じゅう晴れた日はよくたまるポケットのなかの 川のなかでぷかぷか馬とあきかんとブローチがういて…

記憶      田添明美

水面に顔を出すあたり一面水であるみわたすかぎりつぎつぎに水面に顔を出した人が浮かんでいる おそらく みな水面下では足を動かしているのだろうが水はたいらかなままでいる 名もない鳥がよこぎっていく 水の生起がその場処を充たす 〈今晩は〉 全員が上を…

明るむ      田添明美

闇から手足がのびる闇は黙ってみている静謐の中で闇の物語はつゞく たったひとつの闇から派生する群舞する数えきれない羊たちと書きつける その場所にとどまり眠りたくない指先から闇は闇につながれつながりやがて闇はくれていくのだ 忘れないで 今日も朝を…

毬       田添明美

最初があったね それ以前の最初を探そうと階段をおりていく 毬のようなものをみつける蹴ってみるまだ階段は下へと続いている 階段をのぼってくる人もいるみな一人ずつ色とりどりの毬を持ってくるくるまわしてのぼっていく 最初の最初をみつけたらしい顔がほ…

夜       田添明美

停電したようにまっくらの夜になる 耳をすますと 手を離さないで 離さないで 離 さわさわさわさわ 月明かりにふたつの空中ブランコが揺れる R2.9.10

タクト       田添明美

命を終えた鳥が落下する象には象の墓があるが鳥の死骸を見たことがない 囀りを止めた鳥が落下していく時その鳥を受け止め 抱きしめ空に昇っていくものがある 空の奥処 掬われた鳥たちの居場所 見上げると雲が流れる空の色がうつる 晴天の日も雨の日も昼も夜…